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ヨーロッパ企画・上田誠 × ノーミーツ・小御門優一郎 対談インタビュー

結成25周年を迎え、2023年9月に第42回公演「切り裂かないけど攫いはするジャック」の上演を控える、劇団ヨーロッパ企画代表の上田誠。そして、翌月10月に東京国際フォーラムから贈る舞台演劇番組イベント生配信ドラマ『あの夜であえたら』を手掛けるノーミーツ主宰の小御門優一郎。すべての公演の脚本・演出を担当し、多方面にわたってコンテンツを制作されている上田と小御門にインタビューを施行。お互いの活動や印象、これから上演されるそれぞれの作品について聞いた。

――常に面白いことや新しいことに挑戦されている印象を受けるお二人ですが、お互いの活動をどのようにみられていますか?

上田誠 最初はノーミーツという特異性のある集団として見かけていたので、演劇をどう思ってるんだろうって(笑)。僕はどちらかというと中学高校と音楽をやっていて、たまたま演劇をやったというくらいの距離感なんです。(演劇は)向いていたけど、劇作を読み漁ってというタイプではなかったので、それもあってZoomで演劇をやるって(演劇を)どう思ってるんだろうって(笑)。

小御門優一郎 あはははは。

上田 でも、それが良かったんです。痛快だったというか。それから作品を拝見して、めっちゃ演劇が好きな人だって思ったんです。お会いして話をして、演劇文脈の人だったって思いました。

――具体的にどういったところを見て思われたんでしょうか。

上田 舞台『背信者』(2023年)がド演劇だったんですよ。それが、演劇から遠いからそのド演劇をやろうと志向されるのか、あるいは演劇をすごく愛しているからなのかわからないですけど、その作品が特にそうでしたね。

――小御門さんはいかがですか?

小御門 ヨーロッパ企画さんは、自分たちが面白いと思っているフォーマットやアイディアを信じて、それに合っている場所や表現のところへすごく軽やかにいくという印象をかねてから受けていました。それがすごくかっこよくて。僕も演劇とかひとつの表現形態にこだわらずに、面白いお話を作れる人になりたいという憧れがずっとありました。

――今回、ヨーロッパ企画25周年で上演する『切り裂かないけど攫いはするジャック』は、初のミステリー作品ということですが、この着想はどこから生まれたのでしょうか。

上田 まず、ミステリーをやりたかったんです。だからタイトルも最初は全然違って、『凶器は氷』にしようとしていたんです。でも、これだと超ミステリーの記号すぎて、おれは死ぬかもしれないと思って(笑)。

――たしかにすごいミステリー感がします。

上田 そこで自分はパズラー(本格ミステリ作品)をやりたいんじゃないと気付いたんです。演劇は役者が演じるものなので、役者が演じて楽しいことになっていたり、愛すべき時間が流れていた方がいいと考えた時に、世界観がある方がいいなと。そこで、世界観とパズラー感が同居する、切り裂きジャックのような世界を描こうと思いました。ミステリー感もあるしロンドンの人たちを描く楽しさもありそうだったので。そして、どコメディがやりたかったので、タイトルを聞いただけでコメディだとわかる『切り裂かないけど攫いはするジャック』にしました。僕はわりとタイトルを決めてから話を作るんです。

――そうなんですね。初めて知りました。

上田 第一回公演からそうなんです。あと、演劇でミステリーをやるってありそうでそんなにないんですよ。演劇と小説の推理もののケレン味は全然違うので、演劇としてのミステリーはまだあんまり発明されてないかもと思って、取り組んでみようと思いました。“攫う”って行動として大きいので演劇的なんですよね。「ダイイングメッセージが!」と言われても(お客さん)には見えないので。

小御門 肉体的なコミュニケーションも発生しますね。引っ張り合ったり、抵抗したり。

上田 そうそう。そういう意味でちゃんと演劇で推理ものやミステリーものを作れたらと。ロジカルに行きすぎない、コメディとしてやれたらというのが今回の試みです。

――小御門さんは、今回、『舞台演劇番組イベント生配信ドラマ』というかなり新しいことへの挑戦になると思いますが、いかがでしょう。

小御門 やっぱり難しいんですよ(苦笑)。舞台『背信者』は、ステージ上で起こることを肉眼と配信のどちらかで観るか、という眼差しみたいなところがテーマだったんですが、今回は楽屋にも話がおよんでいくので、そこを表現する難しさやタイム管理をする難しさがあります。ただ前作からこのフォーマットで手応えを感じているのは、観客がただの観客ではなくて、物語に介入できる資格を持っているというところです。今回も、劇中でラジオ番組イベントをやるよというのがあるので、作中のキャラクターもお客さんを認識していいし、呼びかけてもいい。演劇ってお客さんが入って完成すると言いますけど、お客さんが入ってくれないと設定上まずい!っていう・・。

上田 なるほど。客席が満席という設定なんですね。

小御門 そうなんです。たくさんの人の前に立つからあれこれ・・というストーリー展開もありますで、これからチケットを買ってくださるお客さんに、その景色を作りにきてください!という気持ちもあり・・。そこは難しくもあり面白いところでもありますね。

――これまでのお二方の作品やお話を伺って、お客様を巻き込む力というものにとても長けているように感じられます。そのあたりへの意識は何かされていますか?

上田 自分の場合は、僕たちが舞台上や映像中でフィクションを見せて、お客さんはわりと傍観者になっている感じがあります。それでもコメディなので、笑い声でお客さんに参加してもらうというか、笑い声がないと着地しないところがあります。企画性に富んだ実験的なことやコンセプトを突き詰めるようなこともやるんですけど、コメディをうたっているからには、ちゃんと“笑い”というエンターテインメントに着地させることがコメディ劇団の使命だと思ってます。なので、最終的にお客さんに笑ってもらうという点で、お客さんに参加してもらうことは意識しています。でも配信劇をやった時に、チャットやコメントで参加しているのを見て、「それもあるかー」って(笑)。(お客さんに)こっちに向いてもらってばかりじゃなくて、こっち側に立ってほかのお客さんを引き入れてもらうみたいな、そういう流れのでき方もあるのかと最近気付きだしたくらいで、これまであんまり考えていなかったので、(小御門さんは)すごいなと思います。僕もお話を聞いてみたいです。

小御門 僕もコロナ禍になってから気付いたといういうか。一番最初にZoomで生配信の作品をやった時に、ドラマをTwitterで実況しながら見るのと近いようなことが起きたんです。普通劇場だったら喋ったりしながら観れないですけど、それがテキストだったらやれるというのは生配信ならではだなと思いました。コロナ禍を題材にしたタイムスリープものの作品を生配信でお客さんに観てもらう時、同じように当時のコロナ渦真っ只中の一人きりの部屋で観るというのは、すなわち物語世界の参加者になったかのような錯覚を起こす効果があったという風に思っています。そこで、お客さんを巻き込むことって突き詰めていくとすごい火力になるかもしれないという気付きがありました。そこからあの手この手を試して、観ている人をリスナーとみなしてしまうという、その意味の重ね方がうまくいったのが『あの夜』シリーズの戦い方というか、やり方です。

上田 『あの夜』の『あの』というのが素晴らしいですね。観客を巻き込むキラーワードだと思うんですけど、「あの夜」とか「あの夏」とか言われたときに自分事みたいになるじゃないですか。

小御門 代入可能性みたいなものは意識しているというか。オールナイトニッポンで、架空のパーソナリティキャラクターを作って、「そのパーソナリティが天才ラジオスターなんです」みたいなやり方をしても「現実にはいないでしょ」という冷めが出てくるというか。むしろ熱心なラジオリスナーに反感感情を抱かれちゃうんじゃないかと。なるべくラジオにまつわるお話を書きながらも、みんなのラジオが好きな思い出とか自分が好きなラジオ番組のエピソードとして代入可能なお話にするというのは心掛けています。それが『あの夜』というタイトルにも現れている感じです。

上田 そう思います。大事なんですよ。観客の青春を借りたり、真夜中を借りるやり方ってやっぱり絶大なエネルギーを生むんじゃないかな思います。

――それでは、最後にそれぞれの作品の見どころをお願いいたします。

上田 ヨーロッパ企画ならではの劇をやろうと思っています。この人たち変わったことをまた考えたなとか、そういうのが自分たちらしい感じがしているので。25年作っていると手なりでできてしまうことがやっぱりあるんです。でも、なるべくそれはやめようって。今回はミステリーものにチャレンジしますって言ってますけど、やったことがないけど、劇場で観たら面白い!けど、ひょっとしたら失敗するかも・・ということを計画中です(笑)。珍しいことをやると思うのでぜひ、観に来てください。

小御門 今回のテーマとして、好きなものがどうやったら続いていくかという内容になっています。前作で、ラジオディレクターをやっていた主人公の植村杏奈(髙橋ひかる)が、「これってラジオディレクターの仕事なのか!?」ということをやったり、作中の担当番組(『綾川千歳のオールナイトニッポンN(ニュー)』)が終わることが決まったうえでのイベント開催だったりして、どうやったら自分たちの仕事や好きなものが続いていくんだろうと。どうしたら続けていけるんだろう。ということがテーマになっています。好きな番組やコンテツが終わって悲しいということはきっと誰にでもあると思うので、みなさんに共感できるお話になっていると思います。そして、先ほども申しましたように、お客さんというか、その作品世界に参加してくれるリスナーがいないと完結しない物語になっていますので、ぜひ、その物語世界に参加しにきてほしいと思っております。

ヨーロッパ企画 第42回公演『切り裂かないけど攫(さら)いはするジャック』は、2023年9月9日(土)の栗東プレビュー公演を皮切りに、全国10都市を巡演。現在、栗東プレビュー、京都、東京、高知、広島、魚津公演のチケット一般発売中。なお、福岡、大阪、横浜、名古屋公演は、8月5日(土)より開始予定。
舞台演劇番組イベント生配信ドラマ『あの夜であえたら』は、2023年10月14日(土)・1日(日)に東京国際フォーラムホールA・オンライン劇場ZAにて有観客+生配信。チケット3次先行は8月6日(日)23:59まで受付予定。


公演概要
ヨーロッパ企画 第42回公演
「切り裂かないけど攫(さら)いはするジャック」

【作・演出】上田誠
【音楽】 青木慶則
【出演】石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、
藤谷理子 / 金丸慎太郎、早織、藤松祥子、内田倭史、岡嶋秀昭

【公演期間】2023年9/9(土)~2023年11/12(日)
栗東プレビュー、京都、東京、高知、広島、名古屋、魚津、福岡、大阪、横浜

【公演情報】https://www.europe-kikaku.com/e42/


公演概要
舞台演劇番組イベント生配信ドラマ
『あの夜であえたら』

【出演者】髙橋ひかる
中島歩、工藤遥、入江甚儀、井上音生、高野ゆらこ、渡辺優哉、小松利昌
山口森広、吉田悟郎、山川ありそ、鳴海唯、相田周二(三四郎)
千葉雄大
【製作総指揮】石井玄
【脚本・演出】小御門優一郎
【監修】佐久間宣行

【日程】
2023年10月14日(土)16:00開場/17:00開演
2023年10月15日(日)15:00開場/16:00開演
【会場】東京国際フォーラム ホールA
【配信】オンライン劇場ZA

【公式サイト】https://event.1242.com/events/anoyoru2