三浦涼介「胸張ってオイディプス王としてお客さまの前に立ちたい」舞台『オイディプス王』インタビュー
古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人、ソポクレスが紀元前247年頃に執筆した『オイディプス王』。世界最高峰と称されるギリシャ悲劇が、2023年に続き三浦涼介主演で上演される。演出を務めるのは、石丸さちこ。石丸は初演で、渦巻く人間の不条理、根底で交錯する深い愛情と愛憎、叙情的なセリフと衝撃の展開が連続する世界観を、悲劇でありながら圧倒的な感動作として作り上げ、大好評を博した。約1年半ぶりの再演では、三浦、大空ゆうひが引き続き出演するほか、岡本圭人らが新たに出演する。初演で“揺るぎない表現力とカリスマ性”が絶賛された三浦に再演への想いや石丸とのクリエイトについて話を聞いた。
――約1年半ぶりの再演になりますが、改めて初演を振り返っていただいて、今どのようなお気持ちですか?
こんなにも早く再演をさせていただける作品もなかなかないのではないでしょうか。僕自身、これまでさまざまな舞台に立たせていただいてきましたが、再演という形で出演する機会はほとんどなかったように思います。(取材当時)再演までまだ少し時間がありますが、すでに「オイディプス」モードに入り、台本を開いて、日々格闘しているような感覚です。初演当時は、膨大なセリフ量ととんでもない作品の主演ということへのプレッシャーもあり、ネガティブな部分が多少なりともありました。ただ、今、改めて台本を開いてみたら、「これを自分が演じたのか」という驚きがあって。おかげさまでこの作品でオイディプスとしてステージに立たせていただき、千穐楽を迎えられたという誇らしい気持ちと、改めてオイディプスとして生きられる、お稽古がスタートする日を楽しみにしています。
――『オイディプス王』は約2500年前に描かれた作品ですが、そうした作品が今なお、人々を魅了しています。三浦さんはこの作品のどのようなところに魅力を感じていますか?
僕が石丸さちこさんの元で作ったオイディプスは、最後に少しの希望のようなものを残して生きています。あのような状況でも、あんなことになっても生きるということを選んだオイディプスが、たった1つでも希望を持つということを石丸さんと話をして二人で作り上げました。今回の再演では、どういう形で作るのかはまだ分かりませんが、この作品は悲劇でありながら、人間としての生き様を描いた物語で、オイディプスは「生きる」ことを選択し、生きることの可能性や希望すら感じていました。それが僕にとっては魅力だなと思いましたし、今回もそう演じたいと思っています。
――三浦さんにとって演出の石丸さんはどんな存在ですか? 石丸さんの演出の魅力はどんなところにあると思いますか?
魅力は、「愛情」だと思います。厳しいところはたくさんありますが、僕は石丸さんの愛情しか感じていません。
――それは人に対する愛情ですか? それとも作品に対する愛情?
全てです。演劇をとにかく愛されている方だと思いますが、役者に対しても、放っておかない。「私を信じてついてきてくれれば大丈夫だから」と。僕をこうして立たせてくれたのも石丸さんだと思いますし、僕は石丸さんに出会っていなかったら、お芝居をまたここまで好きになることはなかったと思います。1度目は、蜷川幸雄さんの元でお仕事をさせていただいたときに、「お芝居ってこんな楽しいんだ」と思わせてもらって。でも、蜷川さんがいなくなってしまって、どうしたらいいんだろうと思っていたときに石丸さんとお会いできました。そこから改めてお芝居の楽しさや厳しさ、怖さといったさまざまなことを教えていただいています。なので、僕にとっては「愛情の人」です。
――お互いに信頼をし合える関係なのですね。
僕が石丸さんに何かを渡せているのかは分かりませんが。ただ、精一杯やるだけです。できることなら石丸さんが叶えたい夢を僕が叶えてあげたいと思います。せっかく出会えたのですから。
――蜷川さん、そして石丸さんとの出会いの中で、舞台でのお芝居、舞台に立つことの魅力をどんなところに感じていますか?
あまりユーモア系の役を通らずにやってきたように思われがちですが、10代や20代前半の頃は、自分の性格とは全く違うテンションの高い役を演じさせていただく機会がちょこちょこあったんです。そういうときは、台本に書いてあることだけでなく、自分からいろいろと試して、それを見せるということをやっていました。ですが、商業的な作品に入ると、形がしっかりと決まっていることも多くて。例えば「右から左に歩いてください」「ここで歌って、このセリフをここで話してください」という細かな演出が決まっている作品もたくさんありました。そんな中、蜷川さんの作品に初めて入らせてもらったときに、いろいろなことをお稽古で試してみたんです。トイレのシーンだったら、トイレットペーパーを(お尻から)垂らして出てきたり、「やっちゃうことあるよね」ということをお芝居に取り入れて、自分で考えて試していたら、蜷川さんから「お前は面白いな」と言っていただいて、「どんどんやれ」と。1作目はそうしてスタートしました。「蜷川さんの現場は、特に若手はめちゃくちゃ怒られることもあるし、怖いからとみんな閉じこもってしまうことも多い」と聞きますが、僕は全くそんなことはなくて、むしろ現場に行くのがすごく楽しかったんです。その後、続けて蜷川さんの作品に入らせていただいたときに、とてもいい役をいただいて、セリフも多い役でしたが、するするとそのセリフも入ってきました。きっとそれは、変な緊張がなかったからだと思います。すごく楽しかったんです。なので、お芝居を楽しむことが大事だなと改めて思いました。その後、蜷川さんの作品から離れていたら、その感覚がなくなり、寂しい気持ちもあり、刺激が足りないと思っていたのですが、そんな中で石丸さんと出会えて、全く同じ気持ちになれました。石丸さんとは『マタ・ハリ』という作品でお会いしたのですが、僕が出演したのは再演でしたので、すでに初演で形が出来上がっていて、動きも場所も決まっていました。ですが、僕はそれをことごとく無視してやりたい放題やったんです(笑)。それを見た石丸さんが「涼介は自由にやりなさい」と言ってくださいました。自分で考えて提案してももちろんダメなこともたくさんありますが、与えられるだけでなくやってみるという作業やみんなで一緒に作っていくという作業はすごく楽しいです。
――俳優業を続けるモチベーションの一つがそうした楽しさですか?
そもそも、僕はこのお仕事をずっと続けようなんて思ってないです。僕の替わりはいくらでもいると思っているし、長くこの仕事だけで食べていけるなんて思ってないので、常に危機感を持ちながら生きています。なので、モチベーションは、応援してくださるファンの方がいるということだと思います。
――なるほど。そうすると、この先、自分がこうなりたいという目指す姿があるわけではないということでしょうか?
全然ないです。ただそれは、何も考えずに生きているということではなく、そのときそのときを精一杯生きているだけなので、その先のことはないですね。
――目の前の作品に全力ということですね。『オイディプス王』は、三浦さんにとっての代表作の一つにもなるのではないかと思いますが。
僕はきっとこの世界に入っていなければ何ものにもなれなかったと思います。本当に自分に自信が持てない生活をしてきましたから。どこかでいつも1人ぼっちな感覚がありました。ですが、この世界に入って、演出家の方、スタッフの皆さん、キャストの皆さん、そして観ていただき、応援してくださるお客さまのおかげで、僕が何者かになれる瞬間があるんです。それは役者として自分ではない何かになることで、またその役の人生を知ること、歴史を歩むことで、自分を何者かにしてくれて、自信を持たせてくれる。その感覚は、この仕事を始めたことで知れたことです。
――この大きな作品が三浦さんにもたらせたものも大きいのではないですか?
『オイディプス王』のときは、僕は精神的にも肉体的にもボロボロでしたから、お稽古期間中も本当に皆さんに支えていただいて、なんとか立てたのだと思います。初日まで、僕は絶対に支えてくれた皆さんを後悔させたくないという思いでいましたし、支えてくれた皆さんに「楽しんでやって良かった」「三浦がオイディプスで良かった」と思ってもらえなくてはダメだという思いがすごくありました。なので、本当に皆さんに支えてもらって、その瞬間だけでも自信が持てたのだと思います。
――初演に続き、パルテノン多摩で上演されます。劇場にぴったりの作品ですが、実際に初演でパルテノン多摩の舞台に立たれて、この劇場にどんな印象がありますか?
お稽古中のまだセットが組まれてないときに1度、劇場に行って、ステージから客席を見たことがあります。恐る恐る声を出してみたら、声の響きが素晴らしくて、一気にテンションが上がって。それまで不安もたくさんあったのですが、その瞬間に覚悟が決まった感覚があって、すごくワクワクしました。再び、そうした劇場に立たせていただけるのは本当に光栄なことです。先日、リーディングでもお世話になりましたが、やっぱり響きがすごくて、集中していないと自分の声を聞いてしまうんです。それくらいきれいな反響がある劇場だなと思います。ただ、客席から観たことがまだないので、早く観たいなと思っています。
――クレオン役の岡本圭人さんとは、「リーディングシアター GOTT 神」でも共演されていますが、今回はじっくりとお芝居に向き合うことになるかと思います。岡本さんの印象を教えてください。
(「リーディングシアター GOTT 神」以前から)もちろんお名前は存じ上げていましたが、しっかりとお話をさせていただいたのは「リーディングシアター GOTT 神」のお稽古が初めてでした。とても熱心な方で、いろいろなことに前向きに取り組んでいらっしゃる姿が印象的でした。お稽古は、1週間ほどだったと思いますが、毎日、石丸さんとディスカッションしながら取り組まれていたので、その姿に僕も背中を押されました。『オイディプス王』でも刺激的な毎日が一緒に過ごせるのだろうなと思うと、楽しみな要素が一つ増えました。
――公演に向けての意気込みと読者へのメッセージをお願いいたします。
再演ということにあぐらをかいてはいないですが、一度、通って来ることができた道であるということに誇りを持って、改めてきちんと演じたいと思います。そして、前向きにいろいろなことに取り組みたいと思いますし、新たなキャストの皆さんからたくさんの学びをいただきながら僕もきちんと様々なことをお渡しできるように稽古場から精一杯精進してまいります。そして、それを用いて胸を張ってオイディプス王としてお客さまの前に立ちたいと思います。劇場でお待ちしています。
取材・文 / 嶋田真己
ヘアメイク:春山聡子
スタイリング:ゴウダアツコ
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・賞品のネットオークション等での転売は、禁止いたします。
・キャンペーンの応募状況および抽選結果に関するお問い合わせにはお答えしかねますので、あらかじめご了承ください。
公演概要
『オイディプス王』
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎
演出:石丸さちこ
出演:三浦涼介、大空ゆうひ、岡本圭人
浅野雅博、外山誠二、大石継太、今井朋彦 ほか
日程・会場
東京公演:2025年2月21日(金)~2月24日(月・祝) パルテノン多摩 大ホール
大阪公演:2025年3月1日(土) SkyシアターMBS