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中井貴一 名匠・小津安二郎をモデルにした役に「名前をいただいた恩返しができるように」 舞台『先生の背中』

中井貴一主演、映画監督の行定勲が演出を務めるパルコ・プロデュース 2025『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』が、6月8日よりPARCO劇場にて開幕する。初日を前日に控えた7日、プレスコールと開幕前取材会が行われた。

本作は、実在の映画監督のエピソードから着想を得たフィクション。のちの世で巨匠と呼ばれるようになった映画監督、“先生”の撮影所でのとある一日を描く。

昭和30年代。テレビ時代を迎え、映画はその黄金期を終えつつあった。「先生」と呼ばれる日本映画界の名匠・小田昌二朗(中井貴一)は新作の撮影を始めたが調子が出ない。娘のようにかわいがる食堂の看板娘・幸子(芳根京子)の婚約の報告を受け、さらに撮影を引き延ばす小田。脚本家の野崎(升毅)や名女優・谷葉子(柚希礼音)も心配顔だ。皆の前では粋な振る舞いをする小田だったが内心は混乱していた。もう年齢だ。健康が優れない。これが最後の一本になるかもしれない。その恐れが小田の心の中から関わりのあった女たちの幻を引き出す。元芸者・花江(キムラ緑子)、戦争未亡人・和美(土居志央梨)、銀座のホステス・千代(藤谷理子)。いつしか“先生”自身も記憶の中に引きずり込まれて…。

取材会には、中井貴一、芳根京子、柚希礼音、土居志央梨、藤谷理子、升毅、キムラ緑子、そして演出の行定勲が登壇した。

――ご自身の役柄についてお聞かせください。

中井:最後の映画を撮る時にいろんな自分の人生とその映画のあいだで苦悩し、葛藤する映映画監督をやらせていただきます。小津安二郎という人がモデルなんですが、今回はフィクションということで小田昌次郎という名前でやらせていただいています。

芳根:中井さん演じる小田先生が娘のように可愛がってくださる食堂の看板娘の幸子を演じさせていただきます。中井さんのお母様がモデルになっております。

柚希:大女優の原節子さんがモデルになっております、谷葉子役をさせていただきます。

土居:私は戦争で旦那さんを亡くした未亡人である、和美という役を演じます。

藤谷:銀座のホステスの千代という役をやります。

升:小田先生とは苦楽を共にし、盟友であり共同執筆者である脚本家の野崎という役を演じます。

キムラ:元芸者で小田監督の古女房的存在であります花江を演じています。

 

――行定さんにお伺いします。本作上演の経緯やどのような作品にしたいかなどの思いを聞かせていただけますか。

行定:中井さんとは、舞台『趣味の部屋』でご一緒させていただいたんですが、その時と映画祭でのトークショーなどで、日本映画界の全盛期と呼ばれている時代の話をよく耳にしていたんです。その話がめちゃくちゃ面白くて。まるで1つのお話を聞かされたような充実感があったんです。昭和の巨匠や名匠たちを巡る話というのは映画人としてものすごく感動するんですね。こういった話は時代が進むにつれて知っている人たちがどんどん減ってしまう。だからせめて物語や映画、演劇にして次の世代に良き日の日本の芸能というものがあったんだということを伝えていきたいという思いがありました。その中で、僕が憧れていた小津安二郎監督が、中井さんが誕生するまでのお父様とお母様のお話の中で、神格化された巨匠ではなく、身近な日常の一人間として感じられたんです。それがものすごく面白くて、ほんとは映画にしたいと思ったんですが、映画を作るには背景が大ごと過ぎてどうにも立ち行かなかった時に、PARCO劇場さんからまず演劇にしてみたらどうかという話をいただきました。その主役を演じるのはやっぱり中井さんでなければと。小津安二郎をほかにやる人はいないというちょっと無茶ぶりもありながら、中井さんになんとか一緒にやっていただけないかというところから着想した話です。

――中井さん、行定さんのお話を受けていかがでしょうか。

中井:最初は断りました(笑)。最初は話がもうちょっと小規模で、うちの母の実家が松竹大船撮影所の前で「月ヶ瀬」という食堂をやっいたんですが、「舞台のタイトルです」と、持っていらっしゃったのが「月ヶ瀬食堂」というタイトルだったんです。中井さんが生まれるまでをやりたいんですって言われて。そんなてめえの生まれる作品に自分が出るのは嫌だって言ってお断りを申し上げたんです(笑)。小津語録みたいなものはうちに古くから残っているものがあるのでそういう情報をお伝えしますのでどうかほかの方でおやりになってくださいという風に申し上げたんですが、行定監督の映画人としてそういうものを舞台で残していきたいという熱意みたいなものにほだされてというか。天国に行った時に小津先生に怒られるのは俺が1番いいだろうなという風に思ってお受けすることにしました。

――小田安二郎さんを演じるにあたり意識した部分はありますか?

中井:小津先生が亡くなられた時、僕は1歳だったんです。この「貴一」という名前はお先生がつけてくださったんですけど、おじいちゃんみたいなんです、僕にとって。なので、特に何かしようとということではなく、育ってきた環境の中で小津安二郎が刷り込まれていたものを初めて使う時がきた!という感じです。今まで溜まってきたものをこの舞台の上でやらせていただいてるというのが今の自作感覚です。

――先ほど、天国に行った時に小津さんに何か言われるかもしれないというお話もありましたが、実際はなんて言われると思いますか。

中井:「俺はあんなんじゃないよ!」って言われるんじゃないかな(笑)。(一同笑い)こちらに(女性陣に向かって)こんなに美しい女性がたくさんいるんですけど、こんな赤裸々にされるとは思ってないと思います。(一同笑い)。フィクションですけど、それに対してまず文句を言われるだろうなという風には思います。

――芳根さんが中井さんのお母様をモデルにした役どころですが、いかかですか。

中井:芳根さんからも「私、合ってますか?」って聞かれるんですけど、「いや、合ってなくていいです!」って。(一同笑い)こんな綺麗で可憐じゃないですから(笑)。でも、時々母っぽいなと思うところもあるので、とってもあの・・一緒に頑張ってるよね(笑)。

芳根:ありがとうございます(照笑)

――芳根さんは中井さんのお母さまをモデルにした役ということで意識したところや緊張してるところなどがあれば教えてください。

芳根:中井さんのお母様がモデルと聞いた時からずっと緊張しているんですが、お母様のお話をたくさん聞かせていただいたりもして、すごく貴重な機会をいただけて嬉しく思っています。

――芳根さんは今回、6年ぶりの舞台ということですが、いかがですか。

芳根:そうなんです・・(焦)でも本当に皆さんがお優しくて、たくさん支えられて私ここにいられてるんですが、本当にご迷惑をたくさんおかけしておりまして・・でもすごくワクワクしております。

 

――では、最後にお客様へのメッセージを一言ずつお願いいたします。

行定:今日もプレスコールで見ていただいたんですが、映画の撮影場面というのは生ものなんだなと思いました。今日も今日しかないシーンを僕は見ました(笑)。撮影って緊張感が半端ないですよね。その緊張感がこの舞台上でどうやれば出るのかなと。中井さんが小田監督としてそこには入っているだけで緊張感があるんですが、今日の緊張は半端なかったですね。見ている側はスリリング。そこに演出家としてものすごく心が動くというか、感動する場面が多々あります。お芝居はもちろんなんですが、そういう場面も含めてこの空気を皆さんに味わっていただいて、豊かな時代の作り手たちの昭和の映画界というものが、少しでも伝われば嬉しいなと思っております。

キムラ:今までに見たこともなく、出演したこともないような作品です。すごい高揚感とすごい緊張感で幕を開けることになるじゃないかなと思います。新しいお芝居を体験することになるのではなかろうかと思います。楽しみにしていてください。

升:一刻も早く本番を迎えたいという思いです。早くお客さまの感想を聞きたいという思いが強いです。小津監督作品のファンの方やそうでない方、その存在を知らない若い方もいらっしゃると思います。そういう方たちがみんな、「ああ、小津さんという監督さんはこういう時代にこういう映画を撮っていた人なんだなあ。やっぱり昭和はいいなあ」と、そういうことも感じ取っていただけたらなと思います。

藤谷:中井さん演じる小田先生の頭の中を覗き見するような作品ですので、ぜひ小田先生と一緒にお客さまも楽しんだり翻弄されたりしてほしいです。ぜひ、身を委ねていただけたらと思います。

土居:先ほど行定さんがおっしゃったように生もので、その生の瞬間を貴一さん初めとする素晴らしいキャストの方々と日々変わっていくものを楽しんで共有しながら作ってきました。それをまたお客さまと一緒に作っていけることがすごく楽しみです。地方公演もたくさんあるので、その土地の空気を感じながら演じられることも楽しみです。皆さまも楽しんで見ていただければいいなと思います。

柚希:この作品を通して様々なメッセージをいつも受け取っていて、お稽古場から毎日感動する日々でした。心に刺さるセリフがたくさんあり、周りの人を大切にしたいなと思うようなことが散りばめられている作品です。そして私自分自身は、原節子さんという大女優さんをモデルとした役柄に本当に大きなプレッシャーを感じていますが、小津監督に人生を捧げたような女優さんなのかなとも思いますので、私も小田さんに全てを捧げながら、潔くよく、かっこよく、女性らしく、いろいろな面を持っていきたいと思います。

芳根:私自身6年ぶりの舞台になりますので、1つ1つの公演をしっかり噛み締めながら楽しんで頑張りたいなと思っております。作品としては、すごく優しくて、温かくて、不思議な世界を皆さまにお届けできるかなと思いますので、楽しんでいただけたら嬉しいです。

中井:先ほどから何回も申し上げているように、小津先生に怒られるのを大前提にやらせていただいております。この劇場に来てくださったお客さまの1人でも小津安二郎の映画を見てみようと思ってくださったら名前をいただいた恩返しができるんじゃないかなという風に思っています。そうなるように、みんなで努力をしながらやっていきたいなと思っております。よろしくお願い申し上げます。

撮影:宮川舞子

公演は、東京公演を6月8日(日)~6月29日(日)までPARCO劇場にて、その後、大阪、福岡、熊本、愛知を巡演する。


公演概要
パルコ・プロデュース2025
『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』
作:鈴木聡
演出:行定勲
出演:
中井貴一 / 芳根京子 柚希礼音 土居志央梨 藤谷理子 久保酎吉 松永玲子 山中崇史
永島敬三 坂本慶介 長友郁真 長村航希 湯川ひな / 升毅 キムラ緑子
協力:松竹株式会社
企画・製作:株式会社パルコ
公式サイト:https://stage.parco.jp/program/senseinosenaka/
会場・日程:
<東京公演>2025年6月8日(日)~6月29日(日)PARCO劇場
<大阪公演>2025年7月5日(土)~7月7日(月)森ノ宮ピロティホール
<福岡公演>2025年7月11日(金)・7月12日(土) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
<熊本公演>2025年7月15日(火))市民会館シアーズホーム夢ホール
<愛知公演>2025年7月19日(土)・7月20日(日) 東海市芸術劇場 大ホール